筆者:アングラー 鈴木 幹○







第6話 猿の群れと尊厳と



群馬県、尻焼温泉での話である。

この尻焼温泉は公の温泉で、道路脇で止水した川の水全部が温泉なのだ。


当然露天で、無料で入れるから週末はワイルドな方々が集まってくる。

この日は、入湯中にオフロードバイクでツーリング中の3人組が入ってきた。


ゆったりとした時間が流れ、そして私の目の前で、3人組が会話を始めた。

その内容はこうだ。



「この前オフロードバイクで、とある山奥の秘湯の露天温泉に行ったんだよ。

 そしたら他に誰もいなかったんだが、猿の群れが近くまで来てよ...

 道脇に停めた俺のバイクに猿が寄ってたかって... 脱いだ服、全部持って

 いってしまったんだよ!

 ...しょうがなく都内の自宅まで、半裸でバイクを走らせたよ。(涙)」



ようするに露出狂に目覚め、人の尊厳を傷つけられてしまったとのことだ。


その無念、きっと耐え難いものであったのだろう。


筆者はこの悲話に耐えられず、その場で笑ってしまった。









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